牛めしの話
疲れた、忙しくなかったが疲れた。定時で帰ってるけど疲れた。
自炊しようという決意は電車に揺られ、最寄り駅に着くころには消え失せてしまった。
地上に上がり適当な飲食店を探す、といっても頭には通い慣れた洋食屋があった。ここから家路までにあるし。
ふと目につく松屋のノボリ。豚汁100円キャンペーン。松屋でいいや。意志が弱い。
390円で腹に溜まる飯が食えて、無に近い味の味噌汁が文明の味になるのなら越したことはない。
注文はすぐに来た。ファストフード最高、さっさと食って帰って風呂に入るぞ。
……違和感。
具が少ない、米が見えている。足繁く通っている俺でなくても気付くはず。そのくらい少ない。
店員を呼ぼうとした、声が出かけた。……だけど、やめた。
くたびれたおっさんがたかだか290円の牛めしの具が少ない!って言ってるの考えたら悲しすぎる。そんな大人になりたくない。
100円に釣られた俺が悪い。そう思いながら牛めしを食った。
途中で情けなくて泣きそうになったが耐えた。こんなことで泣く大人にもなりたくないので。
月曜日から散々な思いをした。給料日のことを考えながら風呂に入ろう。